(前回のつづき)
9月6日未明、全道がブラックアウトしてただちに命に関わる状況にいたと思えるのは、たとえばICU(集中治療室)に居た患者さんたちでしょうか。
そうした場所は、即時、バックアップ電源に切り替わり、数時間は問題なく過ごせることが分かっていました。
問題なのは、停電がどれほどつづくかです。
バックアップ電源は、蓄電池か非常用発電機によって供給されます。蓄電池の電気が有限なのは容易にイメージできますが、発電機によってバックアップされている電源も、比較的短時間しか持ちません。
まず、燃料がそんなに潤沢には用意されていません。数時間、せいぜい半日分くらいしかない病院が多いのです。
考えてみてください。いままで経験した停電で、1時間以上つづいたことがありますか? 日本ではほぼあり得ないことと見なされてきました。ですから12時間分も準備されているなら、それは十分すぎる量と見なされてきました。
また、驚くべきは、非常用の発電機自体が長く稼働することを前提に設計されていないことです。非常用なので数時間、6時間か12時間も運転すれば安全装置により自動停止されてしまいます。各部の耐久性に限界があるからです。もちろん、数時間の運転を、何ヶ月かおきに、何回も繰り返すことはできます。でも、連続して何日も運転できるようには設計されていません。
そうなると、ICUに居るような重篤な患者さんだけでなく、酸素の吸入が要るとか、透析が必要といった、ある意味「普通の患者さん」が、数日電気がないだけで命の危険にされされることになるのです。
夜が明けても電源が回復しない事態に直面し、そうした患者さんを抱える病院では、数日以上電源が回復しない場合のための対策をすぐに開始します。入院患者さんだけでなく、通院してくる透析患者さんや自宅で酸素吸入をしている患者さんのことも心配しなければなりません。
燃料の灯油や重油の確保、安全装置によりオートストップするはずの発電機を再稼働しても大丈夫かどうか(すぐ再稼働していいのか、時間を置くべきなのか、置くとしたら数分なのか数時間なのか・・・)など、膨大な確認作業が降ってきます。しかも電気がなく、電話も携帯もインターネットもつながらない環境下で!
オンラインにあるはずの取扱説明書も、デジタルのカルテも、見られません。患者さんの住所さえ、コンピュータシステムのなかにあるなら電気がないと閲覧できません。電車も地下鉄もバスも止まっていますから、場合によっては徒歩で、記憶を頼りに訪ねることになる患者さんもいることでしょう。
電気が止まれば命に関わるのは、なにも病人だけではありませんでした。(つづく)

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